• OMOYA Inc.代表取締役社長 猪熊真理子

今、一番面白い仕事は「社会実装研究」だと答えた話。


久しぶりにリクルート時代の元同期に会ったら、

「猪熊が今関わっている仕事の中で、一番面白い仕事ってどんな仕事?」

と尋ねられた。

OMOYA Inc.を起業してから4年。

最近は本当に興味深い、心から面白いと思えるような仕事にばかり携わらせて頂いているので、“一番面白い仕事”と言われて、はてと立ち止まったのだが、

「社会実装研究!」と答えた。

社会実装研究とは、その言葉の通り、「社会課題の解決や経済発展を目指して、研究で得られた新たな知見や技術を、実態経営や実態経済の中に活かしていくことで、社会や経済に便益をもたらすことを目指す研究開発のこと」。

最近はOMOYA Inc.でも、理事を務める一般社団法人at Will Workでもこの社会実装研究的なプロジェクトにいくつか携わらせて頂いて、これが本当に面白い。

女子未来大学は社会実装研究というよりも、インスタレーション・アートに近い。

女子未来大学を事業として立ち上げてから、『女子未来大学は社会に投げかけたい問いを授業として投げかけてみるインスタレーション・アートのようなものだ』と何度かお話したことがある。

女性たちや社会に対して投げかけてみたい問いを、「授業」という形でキュレーションする。

その授業を社会の中に投げ込んでみた時に、どんな反応や影響があるのかは自分たちだけでは想像がつかない。

授業を開催して、そこに参加して下さる方々、お一人ひとりの反応から私たち自身も学びを得て、次の問いや授業が生まれていく。

「どういう学びの場を創りたいのか」を意図するのは、私たち女子未来大学だが、

そこでどんな体験をし、どんな学びが生まれるのか、という学びの場を創り上げていくのは参加者である女性たちである。だから私たちと女性たちとの関係はいつもインタラクティブになっている。

「女性たちにとっての幸せとは何か?」

「何のために働くのか?」「家族とはどんなものなのか?」

「女性にとって、本質的な活躍とはどのようなものか?」

「女性たちは未来をどのようなものとして描きたいのか?」

そういう根本的な問いが、授業を生み出す原動力である。

女子未来大学の場合は、社会実装研究というよりはインスタレーション・アートに近い。

研究で得られた知見や技術というよりも、自分たちの想い、仮説、問いを元に実態社会の中で研究、探求しているからだ。

アカデミックな知見を実態社会に活かす。

今、取り組んでいる社会実装研究がいくつかある。

一つは一般社団法人at Will Workで取り組んでいる社会実装研究のプロジェクトだ。

at Will Workでは今まで年に1回の800名規模のカンファレンス「働き方を考えるカンファレンス」、そしてこれからの日本をつくる100の“働く"ストーリーを集めるアワード「Work Story Award」などを開催してきた。

こういったカンファレンスやアワードは、どちらかというと変革期真っただ中にある今の日本において、働き方改革や働くを取り巻く情報や事例を集めて、社会に対して広く共有していくことに意味がある。

カンファレンスを実施していると、そこで出逢ったり、カンファレンスのセッションを聞いて下さった方々が「自社での取り組みにこう活かしてみました!」とおっしゃって下さったり、「あの時のカンファレンスで出逢ったご縁で今こんなことをやっています!」と報告して下さることがある。

それは私たちにとってはとても嬉しい瞬間ではあるのだが、一方でカンファレンスでいろんな知見や事例に出逢っても、自組織や自分の会社に戻った時に「なかなか現実に活かせない壁」に打ち当たってしまうという声を聞く場合もある

そこで2018年からat Will Workでも重点的に取り組んでいるのが「社会実装研究」である。

大学の先生に協力をお願いして、アカデミックな学術的な知見を、実態経営やリアルな働く環境、組織風土、働く人たちの変革に役立てる。

現在もそのためのあるメソッドを開発し、フィジビリティ的に実際に経営に関わる現場で実践してみているのだが、想定していなかったような学びや気づきが出てきて本当に面白い。(このメソッドについては、皆さんに公開できる時期がきたら、いち早くお伝えしたいと思う。)

そもそも、学者の先生に色んな知見を聞かせて頂くだけでも勉強になるし、例えば心理学分野において医療現場で使われているアプローチが、企業の組織課題を解消していくためのアプローチとして汎用性を持つこともあるのだ。本当に面白い。

論理性、合理性だけでは立ち行かなくなっている今の経済や企業経営において、置き去りにされてきたものの一つが「人の心」、そして「人間理解」だ。

個人的には臨床心理士になりたいと思って心理学科に入学したのに、私が本当にやりたいことは臨床の場にはないことに気づき、大学院に進学せずに就職する道を選んだ。

最近は、例えば組織論の中で、様々なメディアの記事でも、心理学の重要性や知見が臨床の場を超えて様々な場面で活用されているが、当時はそんな情報もまだまだ少なかったし、心理学=臨床の場のイメージが強かった。

ICT技術が発展し、人々の暮らし方も働き方も変わる中で、「人間を理解したい」という気持ちはさらに高まるように感じている。

どんなに技術やテクノロジーが早いスピードで変化しても、人の心はそんなに早く変化できないからだ。どこかで歪みが生まれてしまう。

そういう意味でも、葛藤する人々、葛藤する組織、葛藤する社会において、アカデミックな知見を学術業界だけでなく、実態経営や実態社会に活用していく事例や研究は今後も増えていくと思うし、そこに取り組めることには本当に面白さを感じている。

また、at Will Work以外でも、OMOYA Inc.で文化人マネジメントをしている予防医学研究者の石川善樹さんと一緒に取り組むプロジェクトも面白い。

こちらも中身については言及できないのだが、善樹さんの知見、世界中の最先端の研究をもとに、実態社会に新しい提案をしていくプロジェクトなので、まさに社会実装研究である。

机上の空論には留まりたくない。

リクルートの元同期との会話に戻るのだが、経営に関わっていると「事業戦略を描くことの難しさより、事業を推進していくことに難しさを感じるよね」という話になる。

アイデアを思いつく人はたくさんいても、それを実行に移せる人はほんの一握り」という話によく似ている。

すばらしい戦略を描けること、もちろんそれは素敵なことだけれど、机上の空論に留まってしまっては意味がない。

「現実化していくこと(戦略を現実にしていくこと)」は、戦略だけではいかない難しさや大変さもあるし、人と対峙していく時の立ち行かなさもあるし、一筋縄でいかない時にも課題を突破していく情熱も粘り強さも必要だ。

社会実装研究はそういう意味でも、研究されている素晴らしい知見を実態社会の中で現実化させていく醍醐味があり、その難しさも含めて、人間理解を深める面白い体験なので私にとっては最も面白い仕事なのである。

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