女子未来大学を始めてから、
「コミュニティ」という言葉についてよく考えるようになりました。
女子未来大学のファウンダーは私を含めて3名いるのですが、
残りの2名の駒崎クララちゃんと岡田寿代ちゃんとサービスローンチ前、
事業検討をしていた当初から、
「私たちは一方通行な"サービス"ではなくて、相互に成長し合えるような"コミュニティ"を創りたいね。」
という話をしていました。
「コミュニティとは何か」「どうしてコミュニティが必要なのか」ということを、
その当時から考えて、実際に女子未来大学をローンチして以降、
リアルな女性たちと出逢う中でも、いろんなことを思い、感じて、
「コミュニティは人に居場所を与えるために存在する」
と思うようになりました。
女子未来大学を創立する前、ある社会人6年目の女性の相談に乗っている時、
こんなことを聞かれました。
「社会人になってから、家と会社の往復しかしていません。
学生時代の友達はいるけれど、社会人になって友達が全然増えていません。
真理子さん、友達ってどうやってつくるんですか?」
悩んでいる女性の中には、悩みを相談できる友人がいないというケースも多くあります。
彼女たちはけっして友達が少ないというわけでもなく、SNS上には100名を超える友人と繋がっていたりするけれど、
自分の深い部分や悩みを話し合える友人がいない。
オンライン上ではたくさんの「友達」と繋がっているのに、
心の自分はすごく「孤立」している、という場合もよくあります。
2013年ごろから「サードプレイス」という言葉をよく聞くようになりました。
都市生活者には三つの“居場所”が必要だといわれていて、
第一の場所(ファーストプレイス)が「家」、
第二の場所(セカンドプレイス)が「職場」、
そしてその二つの中間地点にある第三の場所を「サードプレイス」と呼び、
例えばカフェやジム・ヨガスタジオや、公園、映画館や美術館など、
さまざまな場所がサードプレイスになり得るのですが、
「3」という数字は、人々のコミュニティと居心地のよい居場所を考えるにあたって、
面白い数字だと思っています。
一つでは「点」、二つで「線」、三つ揃って「面」になれば、
人には“居場所”ができる。
私が「3」という数字が面白いなと思った時、同時にイメージしたのがこの上の図のことでした。
一つでは点、二つでは線、三つ揃って面になれば、
実は「人には居場所ができる」のではないか、と思ったのです。
3点で「面」になるという考え方は、マーケティングでもよく使います。
例えば何かのデータを分析している時に、
1つのデータだけではまだ、このデータの真実が見えません。
2つのデータを見つけるとなんとなくの方向性は見えるのですが、まだクルクルと回転してしまいます。
3つのデータを見つけられると、意外と面白い真実や事実を発見できる、
これはマーケティングの世界ではよく体験していることでした。
例えば、女子未来大学というコミュニティが目指すものは、
「サードプレイス」の概念にも近い3つめの居場所です。
自宅と会社の行き来だけでなく、3つめの「女子未来大学」というコミュニティがあれば、
人はそこに「自分らしくいられる」「自分らしく生きられる」居場所を見つけられるのではないか、と思っています。
“サードプレイス”の概念だと、点自体が「居場所」を指し、
その点ごとに居場所があるというイメージなのですが、
私が注目したいのは、「3」という面の中で初めて出現する、
その間の居場所こそが、人間にとって自分らしくいられるバランスを指しているのではないか、ということです。
これからの未来には、きっと「Third Family」が必要になる。
「家族」は社会の縮図のような、最小のコミュニティ。
自分が生まれた「家族」。
結婚して新しく創る「家族」。
これでは実は2つの点を繫いだ「線」しかありません。
これからの未来、一人ひとりが自分らしく、活き活きとその可能性を発揮できるようになるには、3つめの家族、「Third Family」が必要なのではないか、と考えています。
この「Third Family(3つめの家族)」はもしかすると、地域のコミュニティかもしれないし、とっても親しくしている友人や仲間などもそれに当たるかもしれませんが、
その他の可能性として「企業がThird Familyになる」ということも大切だと思っています。
OMOYA Inc.では1年間「赤ちゃんと一緒に働く」という取り組みをしていました。
この時に一緒に過ごしたママスタッフも、赤ちゃんも、インターンの学生たちもみんな今でも「家族」のような存在です。
一人ひとりの成長が心から嬉しいし、OMOYA Inc.に関わっていてもいなくても、
家族のように大切で、その成長をずっと願っていたい存在ばかりです。
“赤ちゃんと一緒に働く”という取り組みを始めた時、
「母に家とかいて母家(おもや)と読む、OMOYA Inc.らしい取り組みだね。」
と言ってくれた方がいました。
「会社というコミュニティを家族のようにする」という試みは、
OMOYA Inc.らしい在り方だと思っています。
企業が社員たちを家族のようなコミュニティにしていくためには、
「仕事」や「働くこと」だけに切り出したマネージメントやキャリアアップだけでなく、
その人の生き方や暮らし方、家族観、幸せの価値観なども理解し、
トータルでのマネージメントや、人間的な成長を促していく必要があります。
子育てや介護などの事情がある人にとっても、
きっと企業が3つめの家族「Third Family」になれば、
一人ひとりがもっと暮らしやすく働きやすくなるはず。
グローバルでみても、社員を家族のようなコミュニティにしていく取り組みはもう始まっているみたいですが、日本の社会の中でももっと増えていくといいなと思っています。